深き海より蒼き樹々のつぶやき

Sochan Blog---深海蒼樹

読んだ本について

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

夏休みも後半にさしかかった昼さがり、中学3年生になる娘と僕は、冷蔵庫でよく冷やした残り少ない麦茶を、お互いに渋々ながらも分け合って仲良く台所で飲んでいた。 「そうそう、お父さん、あの本読んだよ」と、出しぬけに娘が言った。 なんの本のことを言っ…

立花隆さんの訃報

近年具合は決してよくないんだろうなと漠然とは思っていた。ぼくをはじめ「読者」であるぼくらは、つねに立花氏のあらたな知見を求めていた。『知』に貪欲だった立花氏が、近年なにを考えなにを感じて日々を送られていたのか、ぼくには知る由もない。ただそ…

『初恋の人の名前を検索してみたことがありますか?』---早瀬 耕 「未必のマクベス」を読む

文庫本の帯に書かれたその一文がなければ、本屋に平積みされた幾多の本のなかからその本を手にとることはなかっただろう。 かと言ってそんなに意表を突くような文章だとは思わないし、おそらくは誰もが経験のあることを問いかけているにすぎない。ただ、どこ…

吉田修一の『愛に乱暴』を読んだ話

さて、(ん? なにが、「さて」だ?)、各種SNSでやっぱり吉田修一はいいなと言ったあとなので、ここらで一応まとまった文章を書いてみようということである。 吉田修一、確かに『悪人』だとか、『さよなら渓谷』だとか、『怒り』だとか、ミステリー寄りな作…

WONDER(ワンダー)ー単純かつ複雑で、嫌悪しながらもたまらなく愛おしい世界について

この本は、分類するなら児童書になるらしい。もちろん、こういった分類に意味がある場合もあれば、ない場合もある。児童書とは、その読者を主に子供たちと想定して書かれた本だと僕は解釈している。もしくは、子供でも容易に読める文章で書かれた本であると。…

幸せに背を向けたまま ---『その女アレックス』(ピエール・ルメートル)

『その女アレックス』を読み終えて、5日ほど経ったことになる。 噂に違わぬ内容で、一気に読んでしまった。 なんせ、読むなら徹夜を覚悟して『その女アレックス』と、わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいるでも、絶賛された本だ。 僕の場合は…

『思考する機械 コンピュータ』(ダニエル・ヒリス著)を読みはじめたら、『痛快!コンピュータ学』(坂村 健)を読み返したくなった

名著と呼ばれている、古典的な著書であるらしい。 僕は、小飼弾氏のブログの石の模様 - 書評 - 思考する機械コンピュータというエントリーにて、この著書を知った。 原題は、THE PATTERN ON THE STONE:the simple ideas that make computers work 読みはじめ…

佐伯一麦の『渡良瀬』を、たぶん、いつか、買うんだろうな

新聞を読むという習慣がなくなって、かなりになる。かれこれで言うと、25年くらいになるだろうか。 しかし、今でも、書評欄というのは気になるもので、自ら進んで新聞を手に取るのは、書評欄が掲載される日曜日だけになっている。 そして、今日が、その日曜…

『素数の音楽』(マーカス・デュ・ソートイ著)を読む

僕自身、数学が苦手なことについては、福田は考えるまでもなく、補助線を描いて、ニッコリと笑ったという記事で、以前にも書いた。しかし、苦手だから嫌いかと言われると、そうではない。逆に、好きというか、憧れていると、言える。 しかし、微分積分も理解…

『立花隆の書棚』を買う

僕は、現在、本屋と呼べるような本屋が、自宅から半径30km圏内にないようなところに住んでいる。 まともなと言うか、そこそこな本が揃った本屋には、車で40分以上のドライブを楽しんでからでないと辿り着けない。