深き海より蒼き樹々のつぶやき

Sochan Blog---深海蒼樹

久しぶりに夜が明ける前の空気を吸った

 ほんとにどうでもいい話すぎるんだけど、今朝、出発の早いお客様の見送りのため早起きをした。どれくらい早起きだったかというと、午前4時に起きた。もちろん、そんな時間にふと眼が覚めることはある。特にトイレに行くためにとか、一瞬だけ目が覚めてスマホで時刻を確認してまた眠るとか、そういうことはたびたびある。
 しかし今朝は午前4時に布団から出て机に向かい、隣室の妻を起こさないよう静かにキーボードを叩き、シャットダウンしていなかったパソコンのスリープを解除していくつかの記事に目を通す。思ったよりも頭はスッキリしていた。そして夜が明ける前の空気が気持ちよかった。窓の外が白みはじめると、今日という一日が始まっていくのに立ち会っているような不思議な感覚に陥る。生きているんだなと、当たり前のことを自覚する。

 

 ものを増やすなとまた叱られそうだけど、ARABIAの商品が買えるようになっていたので、マグカップを注文した。

 

助手席には


 今日はたっぷりと買い物をしてきた。スバルVXの後部座席はフラットに倒されて、屋外用の物干しセットと僕の自室用の組み立て式背もたれ椅子の大きめのダンボールがふたつ載っている。
 収まりきらない金属製竿竹の先っぽが助手席にまで伸びている。シートにはまとめ買いした文庫本が7冊と、馴染みのパン屋で買ったバケット、置きっぱなしの夏用のハイキングハットの下には百円たこ焼きが隠れている。助手席の足元には、ハーブと花のポットが9個。道路の凹凸をとらえた振動にその花と葉が揺れて、まるで風に吹かれているようにも見える。
 車の中には、この前知ったばかりのガールズバンド・リーガルリリー。窓の外では桜がかろうじて満開をたもって、薄桃色の花びらはいつもキミとのいい思い出だけを甦らせてくれる。
 「生きててよかったなぁ」
 車の窓を開けて風を入れる。遅めの昼ごはんはなににしよう。道の駅に寄って焼き鯖寿司を買って帰るのもいいかもしれない。
 「ほんと、生きててよかったな」
 窓をもう少し開けて風の音にかき消されながら、僕はもう一度そうつぶやいた。
 

4月になれば...

 さていったい4月になれば...ぼくはなにをどうするつもりだったんだろう?
 この冬が終われば...
 春になって暖かくなれば...
 4月になれば...なんだっていうんだったろう? 
 情けないことにそれすら覚えていない。毎年毎年新年を迎えるたび、季節が変わるたび、月が変わるたび、呪文のようになにかを先延ばしにして、新たな日々が来るだけでなにかが変わってくれるなんて人まかせな期待をしている。
 
 そろそろ気づけよ。動くのは自分だ。季節が変わろうが、これから何度新しい春を迎えようが、ぼくが動かないかぎりなにも変わらないしなにも始まらない。
 「4月になれば...」だって? 目を逸らしたって仕方ない。とっくに4月になっていることをぼくは知っている。
 「5月になれば...」って言い出さない前に、そろそろいかなくちゃ。

外は暖かく晴れているというのに

 昨日たてた予定では、朝いちばんに車庫から夏用タイヤを引っ張り出してきて車に載せ、馴染みのディーラーに行ってタイヤ交換をしてもらうはずだった。
 けれど、時計の針は午後をとっくに過ぎて3時に近づこうとしている。別段急な用ができたわけでも予定変更を余儀なくされるたわけでもない。からだがだるくて、頭がすっきりとしなくて、車庫から重いタイヤを引っ張り出すのが億劫に思えたり、外出用の服に着替えるのを面倒がっているうちに時間が過ぎていった。
 何もせずに布団の中にこもっていたわけではない。朝ご飯も作って食べたし、昼ごはんだって作って食べた。PS5を立ち上げてゲームもしたし、Amazonから送ってきた「動物のお医者さん」の第3巻を途中まで読んだりもした。tuki.の弾き語りヴァージョンのギター譜だって練習した。
 大切に育てているローズマリーを陽当たりのいい場所に移動してやりたいと思ったり、半年近く放っているロードバイクを整備してみたいと思ってみたり、せめてせっかくだから日光を直接浴びに家の外に出てみようかとも思ってはみる。
 自室の明るく染まった窓に目を細め、ぼくはキーボードのキーを打ちつづける。おそらくはそれがぼくのしたいことだから。
 外は暖かく晴れているというのに。

 

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なかなか春が来ない

 毎年のことだけど、3月に入ってからが焦ったい。寒の戻りだとか三寒四温なんて言葉があるくらいだから、3月とは昔からそういうもんなんだろう。とは思うものの、それにしてもなかなかに春が来ない。

 このあたりでは、お水取りが済むまでは慌てて冬用タイヤを交換するなと言われている。今年も油断して2月中に夏用タイヤに履き替えた連中が、「家に帰れない」だとか「出勤できない」と、思わぬ積雪に右往左往する姿があった。

 なかなか来ないと言いつつも、桜が咲いてしまえば春は駆け足で過ぎていく。桜が散ったあとの4月5月は春ではないのかと言われると困るのだけれど、春らしい春はやはり4月上旬の桜の時期だ。

 梅だってあるにはある。でもやはり桜には勝てない。春と言えば桜だし、桜と言えば春なのだ。日本人として生まれ育った者の宿命としてDNAに刻み込まれているんだから仕方ない。

 あらたまって花見がしたいわけではない。ただ春を感じたい。「あぁ、今年も桜が見れたな」と、誰かに聞いて欲しいわけでもなく、ひとりで呟きたい。ただそれだけのこと。

PERFECT DAYS - Days of HIRAYAMAを観た話

 ヴィム・ヴェンダーズ監督、役所広司主演の映画、「PERFECT DAYS」を観てきた。その感想というわけなんで、ネタバレがイヤな方は読まない方がいいかもしれない。

 まずは、ヴィム・ヴェンダーズ監督のことを思い出してみよう。「パリ、テキサス」は不思議な映画だったし、なんと言ってもナスターシャ・キンスキーだった。僕にとっては。(「ホテル ニューハンプシャー」で熊の着ぐるみをずっと身につけていたのを見て以来、長らく見ていない気もするけど)
 そう言えば「ハメット」をレンタルビデオ屋で借りて観たような記憶がある。ダシール・ハメット。謎多き小説家。ハメット→チャンドラー→サラ・パレツキーと繋がっていく探偵ハードボイルド小説の祖先である。チャンドラーからパレツキーまですっ飛ばしてしまうのは自分でもどうかとは思うけれど、ハメット、チャンドラー、パレツキーはほぼほぼ読んだ。
 そして、ヴェンダースといえば、「ベルリンー天使の詩」だ。前半の退屈さに耐えきれずに寝落ち寸前だったのを覚えている。梅田にあった映画館だった。
 すべて80年代だった。ヴェンダースの映画を観たのも探偵小説にハマったのも。83年は僕が大学に入学した年だ。

 わが地元の映画館、豊岡劇場では本日が「PERFECT DAYS」の上映初日だった。そのせいか思った以上にお客さんが多くて驚いた。多いと言っても20人から30人の間くらいの人数で、大ホールはガラガラなんだけれど、豊劇としては盛況と言っていいだろう。しかも今日は平日なわけだし。
 で、その客層なのだけれど、僕より年上か同年代かなって人たちばかりだった。明らかに若いと思しきカップルがひと組だけいた。役所広司さんの実年齢が67歳。僕より7歳年上だ。いわゆる団塊の世代全共闘世代の次の世代で、70年安保闘争のピークが1968年だったことを考えると、「しらけ世代」と呼ばれていた世代にギリギリ入っているのかもしれない。
 正直、昨年に還暦を迎えた僕ですら映画のなかで流れる曲に馴染みはなかった。僕より少し上の世代かなと、曲の雰囲気でそう感じた。小道具としても登場したカセットテープ自体は、小学生の頃から社会人になった頃くらいまで実用的に使っていた。
 ひょっとしたら、若い人からすれば全共闘世代もしらけ世代も、僕らの世代ですらひと塊りの老人世代なのかもしれない。僕らが40代くらいから下の人たち全部を若い人と括ってしまっているのと同じように。
 世代論っぽいことを言おうとしたんだけれど、まったくもって意味がない気がしてきた。

 さて、映画そのものについての感想を少ししよう。
 ほぼほぼセリフがない映画だと聞いていた割にはしっかりとセリフはあった。
 伏線回収せずに匂わせで終わっていてもいいかなと思った。
 「平山」が好きかと言われると、無条件で好きとは言いずらいし、なんだかんだ結局は見た目かよとも思う。僻んでるわけではないけど。

 とにかく、いい映画だった。
 三浦友和さんが出ているのも僕的にはうれしかった。(「台風クラブ」のいい加減な教師役以来、ひそかに応援している)

豊岡劇場のシニア会員になる

 ありがたいことに、車で1時間ほどのところに映画館がある。それのどこがありがたいのかわからない人は、きっと映画館に恵まれた人生を送っているということだ。昨今地方における映画館は減少の一途をたどっている。東京以外の日本のあらゆる地方においても、深刻な映画館不足が起きている気が、僕はしている。そんな状況のなか、兵庫県の北の端っこにある地域に映画館があるということは、ほぼほぼ奇跡と言っていいだろう。
 もちろんこの豊岡劇場という映画館が順風満帆で今までを過ごしてきたわけではない。何度かの閉館もあった。閉館のたびに誰かが手を上げ立ち上がってくれたおかげで、なんとか今も存続している映画館だ。

 今日、この映画館のシニア会員になってきた。シニアの定義は60歳以上。年会費が1000円で、会員価格の1000円で映画が見られる。しかもスタンプを5個、つまりは5回利用すれば次の1回は無料になる。なんともありがたい。

 さっそく、杉咲花主演の「市子」を見てきた。今週末からは役所広司主演の「PERFECT DAYS」も上映される。何度も言って申し訳ないが、こんな田舎でそんな映画が見られるのだ。ほんとにありがたいね。