深き海より蒼き樹々のつぶやき

Sochan Blog---深海蒼樹

助手席には


 今日はたっぷりと買い物をしてきた。スバルVXの後部座席はフラットに倒されて、屋外用の物干しセットと僕の自室用の組み立て式背もたれ椅子の大きめのダンボールがふたつ載っている。
 収まりきらない金属製竿竹の先っぽが助手席にまで伸びている。シートにはまとめ買いした文庫本が7冊と、馴染みのパン屋で買ったバケット、置きっぱなしの夏用のハイキングハットの下には百円たこ焼きが隠れている。助手席の足元には、ハーブと花のポットが9個。道路の凹凸をとらえた振動にその花と葉が揺れて、まるで風に吹かれているようにも見える。
 車の中には、この前知ったばかりのガールズバンド・リーガルリリー。窓の外では桜がかろうじて満開をたもって、薄桃色の花びらはいつもキミとのいい思い出だけを甦らせてくれる。
 「生きててよかったなぁ」
 車の窓を開けて風を入れる。遅めの昼ごはんはなににしよう。道の駅に寄って焼き鯖寿司を買って帰るのもいいかもしれない。
 「ほんと、生きててよかったな」
 窓をもう少し開けて風の音にかき消されながら、僕はもう一度そうつぶやいた。