村上春樹さんがあなたの質問に答えますという謳い文句で、新潮社が、村上さんのところというサイトを立ち上げた。期間は、2015.1.16.-31の、半月間ということだ。
新潮社のサイトには、村上春樹氏が、わざわざこう書いている。
僕は送られて来たメールにひととおり目を通しますし、すべての返事はちゃんと自分の手でぱたぱたと書いています。アシスタントや編集者に適当に書かせて、署名だけしているわけではありません。ほんとに。しかしひと昔前とは違って、今ではどこからでもメールできるし、おそらくたくさんの数のメールが送られてくるのではないかと予想されます。残念ながら身がひとつしかないので(ふたつもあると意外にしつこいかも)、全部に返事が書けるわけではありません。ですから「返事が来なかったよ」とがっかりされる方もおられるかもしれませんが、どうかそのへんはご容赦ください。
僕が掴みとった要点は、こうだ。
返事はこないかもしれない。けれど、もしも、届いたなら、それは村上春樹氏が自分で書いた返事だ。そして、たとえ返事が来なくても、村上春樹氏本人が僕のメールに目を通すことは間違いない。
甘いかもしれないけれど、僕は、彼を全面的に信用する。
村上春樹氏がわざわざ言うのだから、彼はそれを実行するだろうし、少なくとも最大限の努力をするのが、彼のはずだ。
このブログでも、何度も村上春樹の小説について取り上げ、好き勝手に書いている。
僕と村上春樹と中学2年の娘へのクリスマスプレゼントは、今から、4年ほど前に書いたものだ。当時中学2年だった娘は、高校3年生になり、今日がセンター試験初日だったりした。
僕の実感としては、村上春樹との、過ぎた蜜月について、語ろう(1)に書いたように、どっぷりと彼の作品に心酔していたのは、過去の話になってしまった。
それは、決して彼が悪いわけでも、僕が心変わりしたわけでもない。それなりの時間が、過ぎていったせいでしかない。
どんなに時間が経とうが、変わらぬ愛もあるではないかと、あなたはご機嫌を損ねるだろうか?
愛がなくなったとは、僕はひとことも言っていない。ただ、蜜月と言っていいほどに寄り添っていた甘い時期は、過ぎていったねと言いたいだけだ。勿論、今後において、二度目の蜜月が来ないとは断定できない。
それにしても、村上春樹という作家が、僕にとって特別な作家であることは、今までも今後も変わりようがない。
そして、出版社の企画とは言え、なんでも質問していいよと、向こうから言ってくれているわけだ。1200文字以内という条件はあるにしても。
しかしながら、昔からそうであるように、僕はこういったものに不向きな人間だ。元来が面倒くさいことが大嫌いな性格なもので、『よし、せっかくだから、なにかメールしてやろう!』と言ってはみるものの、大抵それを実行することはない。
あぁだ、こうだ、あぁでもない、こうでもないと考えているうちに、こんなんだったら送らないほうがマシだ。と、ついつい結論づけて逃げてしまう。それが、僕という人間だ。
まぁ、50歳も過ぎて、そういうことが自分でもよくわかってきたので、そんな自分を敢えて裏切ってみたくもなって、メールを送ってみた。
自分で言うのもなんだけれど、内容は、トホホなものだ。それでも、なにかを、村上春樹氏にぶつけてみたかったのだ。ぶつけると言うと大袈裟だが、まさしく何かを伝えたいというか、聞いて欲しかったのかもしれない。トホホであれ、なんであれ。
というわけで、送ったことだけで、一応の満足をしてしまってるわけではあるけれど、返事が来たらなおのこと嬉しいかもしれない。
いや、ここは素直に、返事が来たらうれしいな、と書いておこう。