勿論のこと、『こうすればあなたも幸せになれます』みたいな、そういう話ではない。
でも、ふっと、ため息が洩れてしまう時や、あれもしなくちゃこれもしなくちゃと気持ちばかりが急き立てられて焦っている時、不条理な場面に遭遇してついイライラしてしまう時、怒りのあまり、近くにあるゴミ箱を力いっぱい蹴飛ばしたい時など、そういう、決して幸せではない時があるよね。
理屈を言えば、幸せいっぱいな新婚カップルであったとしても、職場の昼休み、『大好きな夫と離れ離れの時間がツライ』と、新妻は小粒の涙を流しているかもしれない。
そういう、決して幸せではなく、ちょっと気持ちが落ち着かなかったり沈んでいる時に、てっとり早く幸せな気分になる方法ということだ。
別段新しいことを、僕が、発見したわけではない。
ご存知の方は、声をそろえて、ご一緒に。
おいしいものを食べましょう
ただ、それだけのことだ。
コンビニで買ったプリンでもいいし、昼に食べ残したおにぎりでもいい。
誰かにもらったままポケットに入れっぱなしだった割れたビスケットでもいいし、いれたてのお茶の一杯でもいいかもしれない。
経験から言って、『おいしさ』にこだわらなくても、たくさん食べて満腹になってしまえば、それなりに気持ちは落ち着く。
けれど、満腹とか、ならなくていい。そんなことをしてしまうから、退院から4年半で、体重が10kg増えてしまった(重症急性膵炎(8)—僕の病気)なんていう話を、以前にも書かなくてはならない事態に陥ってしまっている。
つい先日の健康診断でも、体重を二回測定しなおされてしまった。前年に比べて、4kgも増えていたから、測定間違いを疑われたようだ。
だから、
おいしいものを食べましょう
たくさん食べなくても、『あっ、おいしい』と思わず声をあげたり、手に持ったスプーンやフォークや箸が一瞬止まるくらい、『おいしい』と思えるものを、少し食べればいい。
大切なのは、その『おいしい』と感じる心だし、その心を失っていたことに気づくために、時間の流れを一瞬だけぷっつりと止めてやることだと思う。
そんな高級なおいしいものばかり集められないよ、と、『おいしい』ものよりも、『満腹感』を求めようとする僕自身が異議を唱える。
たとえそれが安物のクッキー1枚であっても、勢いにまかせて丸ごと口に入れてしまわずに、1枚100円のクッキーを扱うかごとく、せめて半分に割ってゆっくりと食べてみればいい。
そして、その半分のクッキーがきれいに口の中から消えるまでは、なにも口の中に入れてはいけない。
そして、あれこれと考えたり、思い出してはいけない。そのクッキーの味のことだけを、考えよう。