GWのわずかな日々を実家で過ごして娘が帰っていった。以前に書いた還暦祝いはまた今度から一年、無事に還暦祝いも執り行われた。
特に娘とふたりきりで話をする機会もなかったし、とりたてて深刻な話もなかった。いつもながらの帰省だ。相変わらず痩せすぎなところが気がかりではあるけれど、それを言ったところで「食べてるよ」という返事が返ってくるだけだろう。
還暦の祝いをしてくれたことのお礼のLINEを送った。
娘からの返信は、遅くなってごめんねと、あげたネクタイピンをさっそくに使ってくれてありがとう、というものだった。
そして、文末の「元気でいてね」までを一気に読んで、ぼくはスマホを閉じた。
「ん? なんか読み飛ばしたっけ?」
閉じたLINEアプリをもう一度開いて、短い文章を読み返す。
「あっ、そうか」
と、ぼくは気づく。
「元気でいてね」の一文が、社交辞令でも結びの慣用句でもないことにふと気づいてしまった。
今までだってずっとそうだよと、娘は怒るかもしれない。
もう一度、スマホを開いてその文字を追う。なんでもない結びの一節がやけにずっしりと沁みるのは、ぼくが歳をとったせいだろうか?
返信はしない。誰に、なにに向かって意地を張っているのか、ぼくにもわからないけど。