深き海より蒼き樹々のつぶやき

Sochan Blog---深海蒼樹

半沢直樹くん、倍返しも、10倍返しもいらないよ

 ドラマ『半沢直樹』が面白くて、都合で放送を見れないときには、珍しく録画までして見ている。ドラマは、昨夜(8/11)で、第5話まで進み、次回から半沢直樹は東京勤務となり、大阪から東京の本社へとその舞台を移すようだ。

 窮地に追い込まれてからの、劇的な反撃。もはやここまでかというところでの、大逆転劇。悪いヤツらが、『それ見たことか』と勝利の高笑いをあげる中、その高笑いを封じ込め、次々と逃げ道を塞いでいく、畳み掛けるような追い込み。
 ドラマを見ている人なら、あらすじを書くまでもなく、おわかりいただけると思う。悪役たちの演技上手も相まって、逆手をとられて狼狽しまくりの悪役たちを見ていると、ほんとうにカタルシスというか、『水戸黄門』的爽快感というか、なんだかスッとする。/br>  そして、そんな悪役をこなす所謂『上司役』だったり『社長役』だったりする人々への、半沢が放つ名セリフの数々。
 時には、上司を呼び捨てにし、うわっつらの丁寧な言葉ではない、本心の言葉が吐露されるのが、我々のツボをぐいぐい押してくれて、さらに気持ちよかったりもする。

 簡単に書くと、半沢は、上司の不正融資の罠にかけられ、その融資を執り行った責任をあの手この手で追求され、言われなき罪をかぶされた上で銀行員として抹殺されようとしていた。
 この窮地を挽回し、こげついた融資の5億円を回収するため、半沢は奔走する。そのこげつきが、自分のミスではなく巧妙に仕組まれた罠だったことに気づいた半沢は、自分をつぶしにかかる上司たちに言う。

やられたら、やり返す
 うん、気持ちいい。もっと言ってくれ。そうだ、やられたら、きっちりやり返さなければ気持ちがおさまらない。このまま舐められたまま、終わるわけにはいかないんだよ。
倍返しだ
 そうだそうだ、ここまでコケにされて、やられた分だけじゃ気がすまない。倍にして返してやる。熨斗だってつけて、返してやる。
いいえ、10倍返しです
 この野郎、もうここまで追いつめられたんだから、返す時は10倍にして返してやるからな。ズタズタに逃げ場もなく、いたぶりながら、しかし、容赦なく最後の息の根まで止めてやる。

 と、ここで、ふと、『ん?』と思ってしまったのだ。(昨夜の第5話を見た人は、半沢の10倍返しがどんな結末に終わったかを知っているだろうけれど、僕はこの『10倍返し』って言葉が出たときくらいから、ちょっとした違和感をもちはじめていた)
 あれ? なんだかいつの間にか、僕も半沢に感情移入しているうちに、仕返しが増大し過ぎて盛り過ぎてないだろうか、と。
 「やられたら、やり返す。」
 それは、いい。こちらから仕掛けることはないわけだし、これは、あくまでも売られた喧嘩であり、仕組まれた罠であり、振りかけられた火の粉であるわけだ。だから、もしも、やられたなら、やり返す。
 しかし、「倍返しだ」って、まぁ、『倍』くらいならわからなくはないし、いいかなとも思えたのだけれど、「いいえ、10倍返し」って、それはちょっとおかしくないか。やられた分は、やられた分を返せばいいわけで、10倍にする必要はないんじゃないか、みたいな。
 言葉自体は、『倍』になり、『10倍』になり、舌触りよく心地よく響くのだけれど、なんだかね、盛る必要はないんじゃないの? って、ふと思ったんだ。

 半沢、やれれた分を、きっちりやり返せば、それでいいんじゃねぇの?
という、ひとりごとです。