深き海より蒼き樹々のつぶやき

Sochan Blog---深海蒼樹

今年の桜事情

 今年の桜は早咲きで、福岡からいち早く届いた開花の知らせを皮切りに、東京では4月を待たずに散りはじめ、関西でも3月末で満開ということになっている。
 入学式の頃には桜がないなんてことに今年はなりそうで、なんだかそれはそれで新入生たちに申し訳ないような、寂しいような気もする。まだかまだか、いつ咲きそうだ? 早く咲け!と、囃し立てていたことなど忘れて、身勝手この上ないと思いながらも、入学・入社の季節に桜がないなんてどうにも納得できない気分でいる。

 よくよく僕らは忘れがちだけれど、そうだ、桜は、咲けば、散る。と言うよりも、桜に限らず、花というものはそういうものなんだけれど、散る花と言えば、真っ先に桜を思い浮かべてしまう。
 桜吹雪。それは、枯れて散るのではなくて、そのままの姿で散るからこそ、美しいのかもしれない。

 古(いにしえ)に、世の中に桜なんてものがまったくなかったら、春はもっとのどかに過ごせたのにな、と、詠ったのは、在原業平だった。

世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
確かに、桜がなければ、こんなにも『桜、桜』と大騒ぎせずに、のんびりと春の陽気の中を過ごせるのかもしれない。
 しかしまぁ、年に1回くらいは花の咲いた、咲かないで、大騒ぎするのも悪くはないような気もするし、せっかくなんだから、『桜』ごときに一喜一憂する。それが、春なのかもしれない。